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Birth of a Language

http://www.radiumsoftware.com/0611.html#061116
すごく興味深い話。語り口も素敵でさすがです。こういうのが、はてブのホットエントリに挙がるのはすばらしいね。いつものホッテントリはリンク不許可とか非モテとか女子のジーンズが良いか悪いかとか、Javaはダサくてそれに比べてワタクシが使ってるHoge言語は素晴らしいザマスみたいな自転車置き場論(どうでもいい話)で盛り上がってばかりでつまんないだけど*1

聴覚障害を持ち,かつ喋ることの出来ない数百人の子供達が,首都マナグアの二つの学校へと集められた。しかし教師達は経験不足のうえ,教育方針も根本的に間違っていた(言語を持たない聾唖の子供達に文字綴りをベースとした手話を教えようとしていた)とあって,子供と教師の間の意思疎通がままならないという絶望的な状況がしばらくの間続けられることになる。
そのような状況にあって子供達は,いつしか簡単なジェスチャーを使って互いに意思疎通を図るようになっていた。大人達は相変わらず戸惑うばかりだが,まだ言語能力の固まっていない柔軟な頭脳を持つ子供達にとって,独自の「言語」を持つことはむしろ自然な流れだったのかもしれない。それは次第に語彙を増していき,本格的な文法を備え,ついには複雑な意思疎通をも行えるほど成熟した「言語」へと発展を遂げるに至った。後にこの「言語」にはニカラグア手話 (Nicaraguan Sign Language), またの名を Idioma de Signos Nicaragense 略して I.S.N. という名称を与えられることになる。

人間には、生得的に言語を作る能力があるんだけど、それはコミュニティの中でのみ発現するという話。郊外の隔離された家庭で育てられた聾唖の子は、このように高度な手話を発展させられなかったらしい。
さらに、次の少年の話は興味深くて、かつ感動的だった。

ニカラグア手話を操る一人,アンセルモ・アレマンが学校に通い始めたのは 15 歳になってからのことだった。一般に手話の「流暢さ」はコミュニティに加わるタイミングが早いほど優れる傾向にあり,彼のような年長者は不利にあると見られていた。それでも彼は必死に手話を勉強し,今では年少者に劣らず流暢な手話を操るまでに至っている。
その流暢な手話を操って,彼は語った――僕は子供の頃のことを覚えている。他人と意思疎通する方法を持っていなかったことも覚えている。僕の心は空白のようだった。
聴覚障害は彼から意思疎通の手段を奪うだけでなく,考えるための言葉を持つことさえも許さなかった。親米反政府ゲリラ(通称「コントラ」)の家庭に生まれた彼が覚えていることは,鬱蒼とした降雨林の中をサンディニスタ派から逃れ隠れる日々,人殺しの銃,そして恐怖。その彼にマナグアの学校のコミュニティが与えたものとは,他人と意思疎通するための手段と,自らがかつて得られなかったものを表すための言葉だった。

心が言語をつくり言語が心をつくる。この不思議な関係がすごいね。鳥肌立った。
最近流行ったトンデモ系「言葉が水の結晶に影響与える」なんてクソ与太話を信じる必要は全然無い。素のまんまで言語/言葉つーのは十分すごいんだぜと思う。*2

*1:個人の主観です。念のため。しかも結構読んでるし。

*2:ただ本当に冷静に考えると、この話自体がトンデモ系だったなんてイヤなオチもありえるわけで、ちゃんとリンク先とか読んで判断する必要はあると思います。。