あなたの人生の物語

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

どくりょう。いわばタイトル買いをしてしまった中短編集です。
表題作は異星人の言語を解析する女性言語学者のお話。異星の言語を学ぶことによって言語学者の認識は変容していく。ちょっとバベル-17チックな現象ですが、その中身はかなり違います。認識変容の原因自体がテーマに強く結びついています。本編と並行して(未来時制で)語られる、彼女の娘への呼びかけが心に残ります。
個人的には「地獄とは神の不在なり」が心に残った。僕は災害からの奇跡の救出ドキュメントとか見ると、いつも心に引っかかりを感じるんだけど、同じ事考えてる人いたか!という思い。ただしこの作品はクリスチャンにはキツいかもしれない。逆にはまるかもしれない。
殆どの作品は「認識の変化」というものにテーマがあると思う。しかも、そのテーマのためだけに、世界を丸ごと構築/設定し直している場合が多い。平面世界の古代バビロニアとか、改変ヴィクトリア王朝の世界とか。これは執筆にエネルギー使いそうだなーと思った。寡作なのもしょうがない。