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「第9地区」はよかった

フェイクドキュメンタリーなタッチで始まる導入部。主人公は無意識にエイリアンを差別する最低の小人物で全く感情移入できない。観客は、それを酷いなーと思うんだけど、一方カメラの前でゲロはいたりオシッコしたりするエビ星人だって最悪と思ってしまう。アバターのエイリアンとかは見た目に多少違和感あっても清潔で高潔で文化レベルも高い。だから感情移入しやすいんだけど、エビ星人には感情移入する余地が無いわけです。

観客は、「差別してないつもりなのに差別してしまう」という劇中の殆どの人類と同じような状況に置かれている。非常に上手いつくりになっています。これは差別の構造そのものであり、観客は非常に居心地がわるい感じになります。

以降はネタバレを防ぐために詳しくは語りませんが、物語後半に主人公は色んな意味で化けるわけです。ギリギリまでサイテーでよわっちい主人公が人生の中で一度だけ滅茶苦茶カッコイイことをしてしまうんです。*1

終盤、主人公はパワーローダに乗って大暴れしたりするんですけど、その描写がマジでボンクラソウルをガンガン刺激します。ダメ男のほぼヤケクソの感情を表現する手段としてのパワードローダ。意志の延長としての巨大ロボットは日本のロボットアニメの定番ですが、この映画の製作陣は完全にそれを分かってると思います。

観客と主人公の感情を溜めに溜めまくったあとの大暴れ。板野サーカス風演出でミサイルを乱射し、マルチロックオンで敵を破壊し、放たれたロケットランチャーの弾を(ある人物を守るために)超反応でガシッと手掴みする。大量の敵にスダボロになりつつも、ほぼ気合だけで戦いつづける。ここで観客はすごいカタルシスを感じるわけです。この描写は完全に日本のロボットアニメフォーマットで、ザクのパイプを引きちぎったガンダムの頃からの伝統ですよ!

多少SF設定に無理がある点はさておき、この映画は面白いです。この映画にどういうメッセージを感じるかは人それぞれだと思うんだけど、その多面性が面白い。見に行って損は無いですよ。(特にボンクラな人たちは)

*1:後半は、いつの間にかドキュメンタリー形式から普通のストーリー映画になっていて、そこの遷移は完全にシームレスで上手い