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「屍者の帝国」読み終わった(ネタバレ無しの感想)

円城塔さんの芥川賞受賞後第一作となったこの作品は、3年前に夭折した親友、伊藤計劃( id:Projectitoh )さんが冒頭部分、400字詰原稿用紙にして約30枚分だけ*1遺したものを引き継いで書き下ろしたものです。

屍者の帝国

屍者の帝国

フランケンシュタインの怪物(というかゾンビ)を実用化して使役する手段の発見により、ある種の技術革命がおこった架空の19世紀。英国政府機関の密命を受けた秘密諜報員ワトソンの物語です。もちろんワトソンは、、あのワトソン君です。

ネタバレせずに感想書くのは難しい。。

実際の歴史や古今東西の物語の登場人物、設定、背景、ガジェット、現代の社会の風景をサンプリングして組み上げた架空の19世紀世界はとても伊藤計劃らしくて*2、とても面白かったです。複数のオマージュ元が分からないと楽しみが半減するかもしれない

例えば、この世界のコンピュータは解析機関+ゾンビ労働力によって成り立っているのですが、それを運用する組織の描写がなぜか現代のGoogleぽくなってるシーンとか出てきます(その組織の責任者の名前は、、これ以上は言えません)。こういうコネタが数え切れないほど仕込んである。

ヴィクトリア朝時代のインターネット

ヴィクトリア朝時代のインターネット

また、この物語のメタな構造自体が重要な意味をもっているという点では、とても円城塔さんらしい作品だと思います。(ここも詳しく書くとネタバレになってしまう。。)

もちろん単体の物語としての欠点は沢山ある*3のだろうけどとても面白かったです。

(あとでネタバレありバージョンの感想を書く)

*1:とA4一枚ぐらいのメモ

*2:「うわ、寒い」というネタがあるのも伊藤計劃らしいです

*3:いまいち物語の推進力がなく、ゲームのムービーパートっぽい感じがあるとか。。