QCon Tokyoにいってきた
QCon Tokyoに行ってきたので簡単な参加報告メモです。
http://www.qcontokyo.com/program.html
基調講演 ベロシティ(速度)の好循環: 速く進むことの重要性に関して、GoogleとeBayで 学んだこと
Randy Shoup氏による基調講演
http://www.qcontokyo.com/RandyShoup_2014.html
不勉強で知りませんでしたが、eBay、Google、KIXEYEでアーキテクトやディレクターとして活躍した人による開発全般の話。(以前同じイベントで講演されたかたですね)
以下は気になったキーワードのみ
- よくあるアジャイルだったりリーンな感じのお話(頻繁なフィードバックの重要性)
- 分散SOAアーキテクチャに対応したチームビルティング(サービスチーム)
- Googleにおける組織内オープンソース開発モデル
- バグレポートだけじゃなく修正のためのパッチ、レビュー、テストコード等がコミットされレビューされる)
- 技術的負債の管理
- 採用の話(チームに必要な人材をとる。Aレベルの人材はAレベルの人材を招くがBレベルの人材はCレベルの人材を招く)
- eBayでは設計者と実装者の分離、共通の人材プールをつくりそこから戦力を持ってくる、といったことをやったがこれは「うまくいかなかった」
最近流行のキーワードについて説明する、基本と言えば基本的な話でしたが、これだけの分量を現場の経験を交えながら簡潔にまとめるのはすごい。、とても良かったです。
基調講演 2 人工頭脳プロジェクト『ロボットは東大に入れるか』
新井紀子氏による基調講演
http://www.qcontokyo.com/AraiNoriko_2014.html
これが当初想定していたよりも面白かったです。以下のプロジェクトの話。
コンピュータの演算能力はもう少しで人間の脳細胞のそれを超えるが、まだ人工知能が人間と同等の知性を得るのは不可能(セッション後の質疑応答では近未来のシンギュラリティを否定していた)
現在見えている技術でギリギリいけそうなレベル(エッジケース)が、人工知能に東大入試を突破させること。直観に反しているが、日常的な会話をしたりお買い物にいくといった人間的な行動よりもずっと簡単だし成果が図りやすい。
アメリカのクイズ番組でIBMのスパコンが優勝したけど、それは問題文の一定の型があり、しらみつぶしに情報を検索するというアプローチ。
このように最近の人工知能の流行では、知性とは何かみたいな部分には立ち入らず、膨大のデータを利用いた統計や機械学習によって問題を解くアプローチだが、
しかし入試問題はそれだけでは絶対解けず、形式的推論やモデリングといった手段で知性を解き明かす必要もある。
文系科目では、
理系科目では
- 問題を自然言語解析し、
- 形式仕様記述言語に変換し
- さらに一階述語論理形式に変換し
- それをソルバーに入力して解く
といったことを行なう。現在は総合で偏差値40台、数学では一部偏差値60台ぐらいのレベルにまで達しているとのこと。
正直想像していたよりすごいです。
異常検知 ~機械学習の有望なアプリケーション~
オープンストリームCTO 寺田英雄氏によるセッション
http://www.qcontokyo.com/HideoTerada_2014.html
基調講演に多少関連する話。
- 機械学習によって、アクセスログのパターン等を学習させて「普段と違うパターン」が現れたら異常として検知させる、といったことができる
- 機械学習というとコンピュータビジョンなど派手な分野をイメージしがちだが、このような使い方から学習するのも良い
- ログからデータセットが簡単に得られて、評価も異常正常という明確なもので、現実的に役にたつというメリットがある
とはいえ、セッションそのものは機械学習の基礎のような話が多かったです。
聴衆の興味の範囲やレベルがわからないのでプレゼンの組み立てが難しそう。
Components & Modules for Front End Sanity at Scale
フィナンシャルタイムズのWebディレクター Andrew Betts氏によるセッション
http://www.qcontokyo.com/AndrewBetts_2014.html
全然専門じゃない分野だったのですが興味深かったです。フロントエンドの世界もコンポーネント化や自動化が必要という話。
- 600を超えるドメインに分散しているフィナンシャルタイムズのWebサイトをリニューアル
- TwitterBootstrapのようなモノリシックなフレームワークによる標準化ではなくWebのユーザインタフェース部品をコンポーネントという単位で提供し使ってもらうスタイル
- 仕様とツールによる標準化
- Origamiという専用のコンポーネントのための仕組みを作成した(将来はWebComponentsに適合させる)
- コンポーネントの開発はBower(依存性管理),Grunt(タスクランナー)の上にcommonJS,closure compiler,sassといったスタックがのっかった環境になる
- いまやフロントエンドの開発はサーバサイドと同様に依存性管理をしてビルドする時代
- ビルドをサーバでダイナミックにおこない、フロントエンドはそれをインポートするというビルドサーバという仕組みがある
Scalaを用いたドメイン駆動設計の実践ノウハウについて
グリー 加藤 潤一 (@j5ik2o)氏 によるセッション
http://www.qcontokyo.com/KatoJunichi_2014.html
懐かしいJ2EEペットストアの例を、ドメイン駆動設計で、さらにScalaを用いて実践するという話でした。
- DDDの基本概念からの説明
- (というより今回のセッションはほぼDDDにスポットがあたっていた)
- 聴衆のレベルや興味をどこに設定するか、という問題は常に難しい。。
今回のセッションで使われていたScalaならではのテクニックは以下のとおり
- 同一性の実装などエンティティ共通部分をトレイトで
- 値オブジェクトはcaseクラスで
- リポジトリやファクトリの実装でも共通する部分をトレイトで
- 共通のコンテキストのような情報や、エンティティにリポジトリを引き渡す(これには功罪あり)ときにはimplicitなパラメータをつかう
などなど。いわゆる関数型言語としてのScalaの機能をあまり使っていないので、とっつきやすいといえばとっつきやすい。
関数型DDD(これはどんなものになるか想像もつかない)という話ではなかったです。
ちなみに、懇談会で加藤さんと話したときに出てきたのが、
DDDやDCIの勉強会にたくさん人が集まるが、その人たちが求めているのは、実はもうひとつ前の段階、オブジェクト指向の基本なのでは?という話。
確かに毎年前提知識は増えていく一方なので若者は大変だな、、と思います。
Ameba 流 Scrum を浸透させていく方法
Ameba大崎浩崇氏のセッション
http://www.qcontokyo.com/OsakiHirotaka_2014.html
- 2010年からの三年間で開発者急増(開発者は実数で7倍、比率は10%から50%)
- ビジネスが拡大し社員数急増、新規サービスのためのチームが大量に立ち上がり、開発は混乱していた。
- この時期の社員急増と混乱はニュースにもなっていた
- 開発に秩序をとりもどすため、いくつかのチームで自律的にScrumを導入しはじめた
- Scrumを実践するチームが成果を出し、それが噂となって他のチームに真似されることによって浸透していった
- このようなScrumの社内研究や勉強会に役員が興味をもった
- ボトムアップな活動が身を結び、三日間かけた全社説明会などが開かれた。
- 開発ツールの統一などが行われて、本格的な導入が行われている
- トップダウンでいきなり導入するのではなく、それぞれのチームが自律的に実践することから始めたことが勝因
- (そのほかストーリーの並列着手など独自で実践しているテクニックの説明もありましたが、これに関してはスライド参照)
午前の基調講演にもありましたが、「サービス単位の自律的なチーム」というのは
昨今のアーキテクチャにも合致していて、現代的ですね。